2025年2月現在、10年以上前の楽曲『孤独のあかつき』がTikTokをきっかけに再び脚光を浴びているようです。
TikTokの孤独のあかつきブームすごい笑
— mii (@sheenaressa) February 9, 2025
椎名林檎をより沢山の若者が聞くようになり、茜さす帰路照らされど…も流行りそう
個人的な懸念点(?)は、知ったかぶりなんちゃって林檎好きが増えること
孤独のあかつきが本能越えしてるの草 pic.twitter.com/aftLGdBeTI
— だま 🦚🐍🐖 (@danmaruuuuu) February 1, 2025
この記事では、なぜ今『孤独のあかつき』なのか、ショート動画でバズる音楽について考察してみようと思います。
「孤独のあかつき」とは
『孤独のあかつき』は、『いろはにほへと』と両A面シングルとして2013年5月27日に発売された椎名林檎の13枚目のシングルです。タイミングとしては東京事変解散後初のシングルでした。
この曲はNHK Eテレの『SWITCHインタビュー 達人達』テーマ音楽として書き下ろされました。
特筆すべき点としては、作詞を担当したのは脚本家の渡辺あやであるということが挙げられます。
これは椎名林檎名義の楽曲ではかなりのレアケースです。(もしかしたら他にはないかも?詳しい方がいたらぜひコメントをお願い致します。)
ちなみに今作で椎名林檎が作詞を他者に委ねた理由は”異なる分野の達人2人が出会うという番組の趣旨にならうため”とのこと。
「ショート動画バズり」の前例
2013年の楽曲である『孤独のあかつき』が2025年に流行しだしたというのは不思議な感じがしますが、「ショート動画をきっかけに昔の曲がバズった」という現象にはいくつもの前例があります。
その中でも有名な2つをまずはご紹介します。
藤井風「死ぬのがいいわ」
ショート動画で流行った楽曲を語るうえで外せないのが藤井風の『死ぬのがいいわ』です。
藤井風「死ぬのがいいわ」の世界的ヒットは、日本のアーティストの海外への扉を開くか(徳力基彦) – エキスパート – Yahoo!ニュース
『死ぬのがいいわ』が発表されたのは2020年5月。シングルカットされていたわけでもないため、発表当時は特に大きな話題にはなりませんでした。
しかしなんと、2022年頃からいきなり世界中で大流行することに。
そのきっかけとなったのがまさにショート動画での流行だったのです。
2022年8月に公開されたライブ映像は2025年2月現在、8000万再生を超えるという驚異の大ヒットをみせています。
2022年には「Spotifyの海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」のトップに。
藤井風は今世界で最も有名な日本人アーティストの一人になった、とさえ言えるでしょう。

広瀬香美「ロマンスの神様」
『死ぬのがいいわ』の大流行は発表から約2年後のことでした。
ショート動画で流行った曲の中には、リリースから20年以上経った楽曲もあります。
その中でも代表的なのが広瀬香美さんの『ロマンスの神様』です。
TikTok大賞にメタバース降臨。30周年を超えて輝く広瀬香美の凄さ(徳力基彦) – エキスパート – Yahoo!ニュース
藤井風のように世界中でヒット、とまではいきませんでしたが、『ロマンスの神様』は2022年上半期のTikTokトレンド大賞に選ばれました。
発売からの年数を考えれば十分すぎる快挙と言えるでしょう。
「孤独のあかつき」が人気になった理由を考えてみる
ここで話を『孤独のあかつき』に戻します。
『孤独のあかつき』はNHK番組のテーマソングではあったものの、当時爆発的にヒットしたというわけではありませんでした。
10年以上経過した今、なぜ椎名林檎の楽曲の中からこの曲がヒットしたのか考察していきましょう。
BPM・リズム感
ショート動画のBGMを考えるうえで、BPMやリズム感は外せないのではないでしょうか。
その名の通りショート動画は短い動画です。その中で”バズる”には短時間で魅力を発揮する楽曲でなければいけません。
とすると、アップテンポで爽快感のある『孤独のあかつき』がバズったのはうなずける気がしますよね。
個人的には、サビでドラムが裏箔を取る、というシンプルながらも一癖あるリズム感も流行に一役買っているのではないかという風に思っています。
懐かしさを感じる人が多数
『孤独のあかつき』の公式Youtube動画のコメント欄を見てみるとこんな声が。

当時NHKでこの曲を聞いていた人たちの声が多数挙がっています。
”あの頃聞いていた音楽”を不意にショート動画で耳にするとやはり聞き入ってしまうものなのかもしれません。
歌詞の「違和感」
続いて着目するのは歌詞です。
短時間で魅力を発揮することが大事だとすると、歌詞の違和感・引っ掛かりのようなものの影響も大きいのかもしれません。
ショート動画で耳にすることの多いサビ部分の歌詞は以下の通りです。
走りだせ地球は大きいから
抱き締めろ命は短い
君の涙を夢を愛を待っている
広い世界が待っている
この中で歌詞の”引っ掛かり”となるのは冒頭の「走りだせ地球は大きいから」と「抱き締めろ命は短い」です。
この2つのフレーズは、メロディの都合上言葉の区切れる位置が独特です。
具体的には、
「走り」「だせ」
「抱きし」「めろ」
という感じ。
通常の話し言葉とは違う区切り位置であることが”引っ掛かり”となり、耳に残りやすい、という可能性は十分に考えられるのではないでしょうか。
まとめ:ショート動画でバズる曲に法則はあるのか
結論から言うと、ショート動画でバズる曲の特徴を一言でまとめることは難しそうです。
”ショート動画”という特性上、アップテンポで明るいメロディーを持つ曲が流行りやすいことが想像できます。
しかし、”日本最大のバズり”を巻き起こしたともいえる『死ぬのがいいわ』は上記の特徴に当てはまりません。
他にも槇原敬之の『どんなときも。』やOriginal Loveの『接吻』など、スローテンポでバズった曲は多数見受けられます。
また、特定の年代の曲だけが流行っているわけでもないため、時代背景からバズりやすい曲を考察することも難しそうです。
とにかく言えることは、「ショート動画のBGMに使用されることで爆発的に曲が流行する」という、数年前までは考えられなかった流行経路が生まれたということです。
アーティストが”ショート動画映え”を意識して曲を作る日ももしかしたら来るのかも?
とりあえず現在は、”SNSが発展したおかげで日の目を見る楽曲が増えた”と前向きにとらえていても良いのかもしれません。
今後の”ショートバズり曲”にも期待しましょう。