宇多田ヒカル

二時間だけのバカンスは不倫の曲?歌詞の意味を解説・考察【宇多田ヒカル・椎名林檎】

この記事では『二時間だけのバカンス』の歌詞の意味に焦点を当てて徹底的に解説・考察していきます。

結論から言うとこの曲は不倫の歌だと解釈しています。

そのような考えに至ったのは、「歌詞の内容」と「宇多田ヒカル本人のコメント」「曲製作の経緯」が理由です。

気になった方はぜひ最後まで覧ください。

『二時間だけのバカンス』とは

『二時間だけのバカンス』は宇多田ヒカルの6枚目のアルバム『Fantome』の先行配信シングルとして、2016年9月16日にリリースされた楽曲です。

やはりなんといっても注目すべき点は”椎名林檎とのコラボ”でしょう。

(参考:宇多田ヒカルと椎名林檎の関係

歌詞全文

クローゼットの奥で眠るドレス
履かれる日を待つハイヒール
物語の脇役になって大分月日が経つ

忙しいからこそ たまに
息抜きしましょうよ いっそ派手に

朝昼晩とがんばる 私たちのエスケープ
思い立ったが吉日 今すぐに連れて行って
二時間だけのバカンス 渚の手前でランデブー
足りないくらいでいいんです
楽しみは少しずつ

お伽話の続きなんて誰も聞きたくない
優しい日常愛してるけれど
スリルが私を求める

家族の為にがんばる 君を盗んでドライヴ
全ては僕のせいです わがままにつき合って
二時間だけのバカンス いつもいいとこで終わる
欲張りは身を滅ぼす
教えてよ、次はいつ?

ほら車飛ばして 一度きりの人生ですもの
砂の上で頭の奥が痺れるようなキスして

今日は授業サボって 二人きりで公園歩こう
もしかしたら一生忘れられない笑顔僕に向けて

朝昼晩とがんばる 私たちのエスケープ

思い立ったが吉日 今すぐに参ります
二時間だけのバカンス 渚の手前でランデブー
足りないくらいでいいんです
楽しみは少しずつ

歌詞の解釈・全体像

冒頭でも述べましたが、この曲は不倫関係にある2人について歌ったものだと考えられます。

更に具体的には主婦と学生の禁断の愛の歌と考えると、歌詞全体のつじつまが合うのではないでしょうか。

ここからは歌詞を一部分ずつ見ながら解説していきます。

歌詞の意味について解説・考察

1番Aメロ:既婚女性の登場

クローゼットの奥で眠るドレス
履かれる日を待つハイヒール
物語の脇役になって大分月日が経つ

歌詞全体を見ると2人の登場人物がいることがわかりますが、この部分ではまず1人目の女性が描かれます。

「ドレスやハイヒールをしまい込み」、「物語の脇役となった」女性。

この人物は結婚からしばらく経った女性(子供もいるかも)と考えるとしっくりきます。

1番Bメロ:「息抜きしましょうよ」

忙しいからこそ たまに
息抜きしましょうよ いっそ派手に

この時点でも視点はAメロの女性のまま。

やはりこの女性は主婦と考えられそうな雰囲気ですよね。

1番サビ:「二時間だけのバカンス」

朝昼晩とがんばる 私たちのエスケープ
思い立ったが吉日 今すぐに連れて行って
二時間だけのバカンス 渚の手前でランデブー
足りないくらいでいいんです
楽しみは少しずつ

これは不倫の歌だ、と先述しましたが、この曲の面白いところは1番のサビを聞き終えても不倫の歌とは思えないというところです。

現時点では、忙しい主婦のたまの息抜きの曲かな、という解釈も可能です。

しかし、この後曲の雰囲気は一転していきます。

2番Aメロ:椎名林檎登場「スリルが私を求める」

お伽話の続きなんて誰も聞きたくない
優しい日常愛してるけれど
スリルが私を求める

2番に入ると伴奏が小さくなり、曲の雰囲気が変わります。

そして歌い手が椎名林檎に変わり、そのことによってスリリングな空気も生まれています。

なんとなく不穏な感じ。

そして出てくるのが「スリルが私を求める」というフレーズ。

ここでようやくこれが不倫の歌だと判明するような構成となっているのです。

個人的にはこの「スリルが私を求める」がこの曲のキラーフレーズだと思っていて、非常に好きな表現です。

普通に考えれば「スリル」が「私」を求めるわけはありません。「スリル」に意思はありませんからね。本当は「私」が「スリル」を求めているはず。

にもかかわらずこのフレーズをつかうことによって、不倫をしている主人公の他責志向が感じ取れるというなんとも絶妙な表現なのです。

2番サビ:男性目線に

家族の為にがんばる 君を盗んでドライヴ
全ては僕のせいです わがままにつき合って
二時間だけのバカンス いつもいいとこで終わる
欲張りは身を滅ぼす
教えてよ、次はいつ?

ここで2人目の登場人物、不倫相手の男性目線に移り変わります。

「全ては僕のせいです わがままにつき合って」とはいかにも既婚者相手に言いそうなフレーズですよね。

また、Cメロの歌詞でも言及しますが、「欲張りは身を滅ぼす 教えてよ、次はいつ?」という部分から、この男性の方が女性よりも盲目的になってしまっているのではないかと読み取れます。

Cメロ:2人の関係性

ほら車飛ばして 一度きりの人生ですもの
砂の上で頭の奥が痺れるようなキスして

今日は授業サボって 二人きりで公園歩こう
もしかしたら一生忘れられない笑顔僕に向けて

Cメロは前半部分が女性目線、後半部分が男性目線の歌詞になっていると考えるのが自然です。

「今日は授業サボって」という部分から、男性は学生であると推測できます。

先ほども触れましたが、Cメロの歌詞では2人の感覚の違いが顕著に表れています。

女性はこの関係を遊び程度にとらえていそうな感じですが、男性側は「もしかしたら一生忘れられない笑顔僕に向けて」とまで言っています。

既婚者である相手女性の笑顔が「もしかしたら一生忘れられない」のです。

不倫を肯定するつもりはありませんが、なんとなく切ない歌詞ですよね。

やはり宇多田ヒカルは男女の微妙な関係を描くのが上手だなと思います。

まとめ:宇多田ヒカル本人のコメントについても

不倫の歌と考えられる決定的な理由はやはりなんといっても「スリルが私を求める」というフレーズです。

この曲を「ママ友の歌」「友情の歌」「日常の歌」などと解釈している方もいるようですが、やはりどうしても”スリル”という単語と矛盾してしまうのです。

また、この曲について宇多田ヒカル本人は以下のようにコメントしています。

日常と非日常の危うい関係を表現したかったので、母であり妻でもある二人なら説得力が増すし面白いかなと。

私は子供が出来るまで“日常”というものがなかったので、日常を手に入れた分、非日常的なスリルを求める気持ちも分かるようになったんだと思います。

「林檎ちゃんとだったら顔を合わせなくてもデュエットできる」 – Real Sound|リアルサウンド

本人の口から「非日常の歌である」ことが明言されているのです。

これも筆者がこの曲を不倫の歌と解釈している大きな理由の一つです。

”不倫”は世間的に、倫理的に良くないものであるとされていますし、それが常識です。

しかし不倫をしている当人たちにはそこに美しい世界が見えている。

そんな視点を敢えて楽曲として、しかも椎名林檎と共に形にした、宇多田ヒカルの挑戦ともいえる作品が『二時間だけのバカンス』なのではないかと思います。

また、宇多田ヒカルも普段はなかなか描くことのない”不倫関係”を椎名林檎のミステリアスな雰囲気をうまく利用して作り出した曲、とも言えそうです。

「椎名林檎を自分の楽曲で効果的に”利用する”」なんていうことも、「宇多田ヒカルの作品の中で曲の印象を一転させるほど自分の存在感を発揮する」なんていうことも、宇多田ヒカルと椎名林檎にしか成しえない業でしょう。

このことからも『二時間だけのバカンス』は日本の音楽史に残る女性ミュージシャン2人で作り出した、大傑作であると考えます。

以上、この記事を読んでくれた方に少しでも新しい視点を与えることができていたら幸いです。

それではまた。

ABOUT ME
くまねこ
1998年生まれ。音楽が好きです。 宇多田ヒカルさんと椎名林檎さんを敬愛しています。